第2回大阪腎泌尿器疾患研究財団主催
市民公開講座
本当は怖い排尿のお悩み~排尿障害 前立腺がんの最新治療~
病気がわかるやさしい読本
第一部 排尿障害(女性を含む)
1.排尿障害の診断
大阪大学 大学院医学系研究科器官制御外科学(泌尿器科) 教授 野々村祝夫
1986年 大阪大学医学部 卒業、1990年 東大阪市立中央病院泌尿器科 医員、
1994年大阪大学泌尿器科 助手、2007年 大阪大学泌尿器科 准教授、
2010年 大阪大学泌尿器科 教授
排尿障害は下部尿路症状とも呼ばれ、定義としては排尿、もしくは蓄尿に関連する症状とされ、排尿症状、蓄尿症状、排尿後症状の3つに分類されます(図1)。実際に下部尿路症状を有する人は日本の60歳以上のご年配の方の実に78%に認められ、男女合わせた患者さん数は、夜間頻尿が4500万人、昼間頻尿が3300万人、尿勢低下が1700万人、残尿感が1100万人、尿意切迫感が900万人、切迫性尿失禁が600万人そして腹圧性尿失禁が550万人いると推定されています。
特に60歳以上の男性の72%、女性の50%が夜間頻尿に、女性の45%が腹圧性尿失禁に困っているとのデータがあり、排尿障害(下部尿路症状)は多くの方の日常生活に悪い影響を与えています。
排尿障害の診断は問診、診察と検査によって行います。問診ではお医者さんが実際にいつ頃からどんな症状があるか、これまでの病歴や合併症等を詳しく聞くのはもちろんのこと、前立腺肥大症の方には専用の問診票である国際前立腺症状スコアを用いて症状を評価します(図2)。また、蓄尿症状とくに頻尿の診断には排尿日誌という、24時間の排尿時間と排尿量を記録することも役立ちます。
男性では直腸診といって肛門から前立腺を触診し、女性では女性器の内診を行う場合もありますが、多くの場合は下着をとらない診察と検査で診断可能です。検査には、内科の先生でもできる超音波検査から、泌尿器科でしかできない排尿生理検査、さらには膀胱尿道鏡までありますが、先ほども述べたようにすべての患者さんに痛みを伴う侵襲的検査が必要というわけではありません。むしろ医師の方も、できるだけ痛みがすくない検査で診断しようという姿勢で診察に望んでいることがほとんどですから。最初に行う非侵襲的な検査は通常、超音波検査であります。超音波検査は一般には下着を脱がずに、少しだけ下にずらして、プローブ(超音波端子)をそっと下腹部にあてて行います。痛みはありません。前立腺の大きさや、膀胱の形や残尿の有無がわかります。次ぎに行う検査としては、尿流量測定検査(英名:ウロフロメトリー)で、ちょうどトイレの形をした検査器具に自然にためていただいた尿を排尿してもらうだけで、簡単に排尿の勢いや量を測定できます(図3)。この検査でわかることは膀胱、前立腺、尿道といった一連の排尿臓器の総合的な排尿能力の状態です。さらに、詳細に膀胱や尿道の詳細な生理機能を調べる検査としては膀胱内圧測定という尿道から細いカテーテルをいれて、膀胱や尿道の圧を測定することもあります。糖尿病、脳卒中や脊髄損傷といった重度の神経障害による排尿障害では行うこともあります。最終的に排尿障害の原因が膀胱、前立腺、尿道の形の変化、たとえば膀胱の一部が袋状に拡張する膀胱憩室だとか、膀胱腫瘍とか、大きな前立腺肥大症さらには尿道狭搾などの場合、確定診断のため、ファイバースコープ(軟性内視鏡)で膀胱尿道を観察する膀胱尿道鏡検査が必要となることもあります。もちろん、それまでに、できるだけ外から情報をえるため、腹部骨盤CTや造影剤を使用した尿路造影検査(血管から造影剤を点滴して、レントゲンをとる検査)も行うなどして、総合的に判断します。
排尿障害について、まとめますと、1)下部尿路症状(排尿障害)は60歳以上のかたの約8割に認める、2)男性でも女性でも夜間頻尿の困窮度が高く、女性は腹圧性尿失禁にも困っている方が多い、3)希に膀胱腫瘍などの怖い病気が潜んでいることに注意する、4)通常は痛い、恥ずかしい検査はありませんので、安心して泌尿器科を受診することが大事だと考えます。
2.前立腺肥大症
浜松医科大学 泌尿器科学講座 准教授 三宅秀明
1993年 神戸大学医学部卒、2002年 兵庫県立がんセンター泌尿器科 医長、
2007年 神戸大学医学部附属病院泌尿器科 講師、
2010年 神戸大学大学院医学研究科外科系講座腎泌尿器科学分野 准教授、
2015年 浜松医科大学泌尿器科学講座 准教授
(1)概要
前立腺は、膀胱の下部にあるクルミ大(約15g)の臓器で、男性生殖器官の一つです。前立腺のほぼ中央を尿道が貫いており、前立腺部の尿道には精巣から精子を運んでくる射精管が開口しています。前立腺は、尿道を取り囲む内腺およびその外側の外腺から成り、発生から増殖・成長に至るまで男性ホルモンに大きく依存しています。
前立腺肥大症は、60歳以上の人に好発し、前立腺の内腺が腫大することにより、排尿困難や頻尿等の下部尿路症状を来した状態です。しかし、男性ホルモンおよび加齢が前立腺肥大症の発症と進行に関係している可能性は示唆されていますが、前立腺肥大症の正確な原因は明らかではありません。
(2)症状
前立腺肥大症の症状は、畜尿症状(尿意切迫感、頻尿など)、排尿症状(尿勢低下、排尿遅延など)および排尿後症状(残尿感、排尿後尿摘下など)に大別できます。つまり、前立腺が腫大することにより、尿道が圧迫されて尿道抵抗が高くなり、尿の勢いが悪くなる排尿困難が主症状ですが、閉塞に伴い膀胱機能が障害され、尿意切迫感および夜間頻尿などのいわゆる刺激症状も高頻度に認めます。
また、前立腺肥大症は、膀胱刺激期、残尿発生期、完全尿閉期と進行していき、最終的には腎臓からの尿の排泄が妨げられて、腎機能障害に至ることもあります。
(3)診断
前立腺肥大症の診断は、全般的な健康状態の評価とともに、排尿障害を来す合併症の有無、排尿障害の原因となる薬剤服用の有無などを確認した上で、表1に示す検査を行います。
特に国際前立腺症状スコア(IPSS)は、前立腺肥大症の重症度診断に必須の重要な検査であり、7種類の自覚症状の強弱をそれぞれ点数化したものです。一つの症状につき6段階(0~5点)に点数化されており、その合計点で評価しますが、0~7、8~19および20~35点を、それぞれ軽症、中等症および重症に分類します。
(4)治療
前立腺肥大症の治療としては、殆どの患者さんに対して、まず薬物療法を試みます。図1に薬物療法の概略を示していますが、前立腺部尿道の機能的な閉塞に対しては、その緊張低下作用を有するα1遮断薬が有効です。また、腫大した前立腺による機械的閉塞に対しては、腫大した前立腺を縮小させる作用を持つ抗アンドロゲン剤および5α還元酵素阻害剤が効力を発揮します。この他に、植物製剤、漢方薬なども使用されますが、その頻度は高くありません。
上記の様々な薬剤の中でも、前立腺肥大症の第一選択薬としてはα1遮断薬が挙げられます。α1遮断薬は、もともと降圧薬として使用されていた薬剤から開発され、その効果は速やかに発現しますが、起立性低血圧、射精障害などの副作用があります。また、最近ではα1遮断薬と他の作用機序を有する薬剤との併用療法が施行される頻度が高くなってきています。
薬物療法が十分な効果を示さない前立腺肥大症に対しては、外科的治療が選択されます。かつては、下腹部を切開して腫大した前立腺腺腫を摘出する手術が施行されていました。しかし、現在の標準術式である経尿道的前立腺切除術は、腹部を切開する必要はなく、尿道から内視鏡を挿入して、前立腺腺腫を少しずつ内視鏡で切除していきます。また、最近では、内視鏡によるレーザー手術が普及してきています。レーザー手術は、出血が少なく尿道カテーテル留置期間が短いという利点があり、今後ますます施行頻度が高まっていくと予想されます。
3.過活動膀胱
和歌山県立医科大学 泌尿器科 准教授 柑本康夫
1991年 和歌山県立医科大学 卒業、1991年 和歌山県立医科大学泌尿器科 入局、
1997年 和歌山県立医科大学泌尿器科 助手、2004年 和歌山県立医科大学泌尿器科 講師、
2010年 和歌山県立医科大学泌尿器科 准教授
1. 過活動膀胱とは?
過活動膀胱とは、自分の意思に反して膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、英語ではOAB(overactive bladder)
といいます。急におしっこがしたくなり、我慢することが難しい「尿意切迫感」や、ひどい場合には、トイレに間に合わずもらしてしまう「切迫性尿失禁」がみられることもあります。また、多くの患者さんで、トイレが近い(日中8回以上)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間1回以上)といった「頻尿」や「夜間頻尿」もみられます。
2. どれくらいあるの?
最近の調査では、日本人では40歳以上の12.4%、すなわち8人に1人が過活動膀胱の症状をもっているとされています。40?50歳代では5%前後ですが、60歳代で約10%、70歳代で約20%、80歳代で約35%と、年齢とともに患者さんの割合は増える傾向にあります。実際の患者さんの数は810万人で、このうち約半数の方には切迫性尿失禁もみられています。
3. どうして?
過活動膀胱には、脳と膀胱をつなぐ神経のトラブルによって起こるものと、それ以外の原因で起こるものがあります。神経のトラブルとしては、脳出血、脳梗塞、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害がありますが、これらによって脳と膀胱をつなぐ神経回路が正常に働かなくなると、膀胱に尿をためる機能をうまくコントロールできなくなるのです。こうした神経のトラブル以外にも、男性では前立腺肥大症、女性では加齢や出産による骨盤底筋の障害が原因となる場合や、加齢によるもの、さらに原因がはっきりしない場合もあります。
4. 病院を受診すると?
まず、過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を用いて症状を確認します。質問3の点数が2点以上で、かつ全体の合計点が3点以上であれば、過活動膀胱が強く疑われます。5点以下は軽症、6?11点は中等症、12点以上は重症と判定されます。また、排尿日誌に1日の排尿した時刻と排尿量を記録すると、排尿のトラブルの特徴や原因を把握しやすくなります。一方、過活動膀胱と似た症状を来すことのある他の病気(膀胱炎、膀胱結石、膀胱癌、前立腺癌など)がないかを確認することも重要であり、そのために尿検査、血液検査、腹部超音波検査などが行われます。また、過活動膀胱に尿が出にくいといった排尿障害を伴っていることもあるため、残尿の有無も評価します。
5. 治療はどうするの?
過活動膀胱の治療は「薬物療法」が中心になりますが、患者さんの行動を変えることによって、膀胱のコントロールを改善しようという「行動療法」も重要です。
① 行動療法:過剰な水分、アルコールやカフェインの摂取を控える、トイレが近い生活空間や着脱しやすい服装を工夫するなどの「生活指導」、尿意をもよおしても我慢することによって排尿間隔を長くしていく「膀胱訓練」や尿道を締める筋肉を鍛える「骨盤底筋訓練」などがあります。
② 薬物療法:膀胱の勝手な収縮を抑えてたくさんの尿を溜められるようにする「抗コリン薬」がよく処方されます。前立腺肥大症を伴った男性では、「α1遮断薬」が処方されることもあります。薬物療法はあくまでも症状を軽くするための対症療法であり、口渇、便秘、排尿困難などの副作用もありますので、お薬について医師からよく説明を受けて十分に理解しておくことが大切です。
③ その他:電気や磁気で刺激を与えて、骨盤底筋の収縮力を強化したり、膀胱や尿道の神経のはたらきを調整する「電気(磁気)刺激療法」があります。副作用もなく、効果も良いと言われていますが、治療を受けることのできる施設が限られています。
6.さいごに
過活動膀胱の症状がある人のうち、医療機関を受診しているのは男女全体でたったの22.7%、とくに女性では8%にも達していません。過活動膀胱は命に関わるような病気ではありませんが、あなたの生活の質を低下させてしまいます。年だからとあきらめずに、かかりつけ医や泌尿器科医にご相談ください。
4.夜間頻尿
滋賀医科大学 泌尿器科学講座 教授 河内明宏
1984年 京都府立医科大学 卒業、1984年 京都府立医科大学泌尿器科 入局、
2003年京都府立医科大学泌尿器科 助教授、2013年 滋賀医科大学 教授
夜間頻尿とは夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという訴えで、下部尿路症状のうち最も多く、40歳以上の男性の71.7%、女性の66.9%が訴えると報告されています(図1)。また下部尿路症状のうち生活の質に最も影響を及ぼす症状の一つです。臨床的には2回以上が問題となり、寝不足はもとより転倒による骨折のリスクがこの症状によって高くなると報告されています。また3回以上の夜間頻尿を有する高齢者は2回以下の高齢者に比べ、生存率が有意に低いとの報告もあります。
夜間頻尿の原因は尿の量が多くなる多尿、膀胱に溜める尿の量が少なくなる膀胱蓄尿障害、睡眠障害の3つが主なものと考えられ、これらが重なり合っている場合もあります。 (図2)。診断としては排尿の時間と量などを24時間記録する排尿日誌が最も重要です(図3)。多尿はこの排尿日誌により診断されます。多尿は1日の尿量が多い状態ですが、夜間の尿量のみが多い夜間多尿という状態もあります(表)。
多尿の定義は1日の尿量が40ml/kg以上とされ、50㎏の体重の人なら2000ml以上が多尿になります。また睡眠中の尿量が多い夜間多尿は、高齢者の場合は1日の尿量の1/3以上が睡眠中に出る場合を言います。膀胱蓄尿障害は通常は昼間の症状も伴います。1日の排尿回数が8回以上は異常と考えられ頻尿と呼びますが、これも排尿日誌で判断できます。夜間頻尿とともに頻尿がある場合は過活動膀胱や前立腺肥大症などの泌尿器科的疾患の可能性があるため、専門的な検査が必要となってきます。睡眠障害に関しても不眠症のみでなく睡眠時無呼吸症候群など隠れた疾患がある可能性もあり、専門医の診断が必要です。
治療に関してはそれぞれの原因に対する治療となり、多尿、夜間多尿において水分摂取が多すぎる場合には生活指導のみで改善することもあります。また、多尿、夜間多尿の原因疾患として心不全、腎疾患、肝疾患なども考えられ、思わぬ重症疾患が発見されることがあります。また、過活動膀胱や前立腺肥大症などは投薬で改善する可能性があります。たかが夜中にトイレに起きるだけと考えずに一度専門医を受診されることをお勧めします。
5.女性尿失禁
大阪暁明館病院 泌尿器科 松下千枝
2003年 奈良県立医科大学医学部医学科 卒業、2003年 奈良県立医科大学泌尿器科学教室 入局、
2005年星ヶ丘厚生年金病院 医員、2008年 西奈良中央病院 医員、
2011年 社会福祉法人恩賜財団済生会中和病院泌尿器科 医員、
2013年 社会福祉法人恩賜財団済生会中和病院泌尿器科 医長、
2015年社会医療法人きつこう会 多根総合病院泌尿器科 医長
尿失禁とは尿が漏れることです。尿失禁は原因によって数種類に分けられますが、女性に多いのは腹圧性尿失禁(約50%)と切迫性尿失禁(11%)です。
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは、読んで字のごとく「腹圧をかけたときに尿が漏れる」状態をいいます。女性の骨盤の中には膀胱、子宮、直腸などの臓器がつまっており、底でそれらを支えている筋肉と膜を、併せて骨盤底筋とよびます。妊娠、出産、肥満、加齢、仕事や介護などの過度な荷重、さらにはコルセットでのしめつけや便秘による過度な腹圧等々、女性特有のライフイベントや生活習慣によって骨盤底筋はダメージを受けます。そしてそれまで骨盤底筋に支えられ安定していた膀胱や尿道が緩み、お腹に力が入るだけで尿が漏れてしまうようになるのです。
治療法は行動療法、薬物療法、手術療法の3つに分かれます。
【行動療法】緩んだ骨盤底筋を鍛える骨盤底筋訓練です。膣や肛門の筋肉を体の内側に引き込むような感じで10秒ほど引き締め、その後10秒ほど緩めます。この「締める、緩める」を10回1セット×5セットを毎日行います。骨盤底筋が動くのをお風呂などで確認するとよいでしょう。あおむけ、よつんばい、立位、座位など様々な体位で行えますが、最初はあおむけがおすすめです。もともと膣を収縮させられない人も2割程度いると言われているため、わかりにくい時は泌尿器科医師に相談してください。3か月続けても効果を感じない場合も医師に相談しましょう。
【薬物療法】尿道を締める効果のある薬です。手指振戦や頻脈などの副作用があれば医師に相談しましょう。
【手術療法】行動療法や薬物療法の効果が不十分な場合に考慮します。一般的には中等度から重症な場合が適応となりますが、軽症でも運動時や労作時に支障をきたす場合は適応となる場合があります。術式はTVT手術、TOT手術とよばれ、尿道の下に5mm幅のメッシュテープをあてて腹圧時に尿道を動きにくくすることで尿失禁を防止するものとなります。手術時間は約30分で、入院は施設にもよりますが1~5日程度です。成功率も約80~90%と高いですが、術後にテープの調整を行うこともあります。元々尿が出にくい方は術後に排尿困難で困ることもありますので、排尿機能をきちんと調べてから手術を決めることをお勧めします。
切迫性尿失禁
通常、膀胱に尿がたまってもトイレなど排尿してもよいと思えるところまでは我慢できます。その我慢ができなくなり尿が漏れてしまうことを切迫性尿失禁といいます。原因は様々ですが、主に膀胱の血流障害、自律神経障害、中枢神経の障害などが挙げられます。膀胱に炎症や癌ができていることで一過性に出現することもありますので注意しましょう。
女性においては、女性ホルモンの低下や骨盤内臓器の下垂(骨盤臓器脱)などが原因になることがあります。
骨盤臓器脱とは、骨盤底筋が弱ることで、骨盤内臓器(膀胱、子宮、直腸)を支えきれなくなりそれらが膣から脱出した状態をいいます。脱出した臓器によって膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤などと呼ばれます。軽度であれば頻尿、切迫性尿失禁を引き起こしますが、重症になるにしたがって排尿困難が出現するのが特徴です。完全に脱出してしまうとまったく排尿ができなくなって病院に駆け込まなければならないことさえあります。
治療法は、軽症であれば骨盤底筋体操で改善することもありますが、重症では効果は見られません。ペッサリーとよばれるリングを挿入して整復することもありますが、長期的には膣のびらんや感染を引き起こす可能性もあり、手術が勧められます。年齢、重症度、合併症などにより様々な術式があり、大きく分けると「メッシュを使用する手術(TVM手術、LSC手術)」「メッシュを使用しない手術」に分かれます。など各々メリットデメリットがありますので、主治医とよく相談して決定することが肝要です。
最後に、尿失禁があることで行動範囲が狭くなり生活の質(QOL)が低下している患者さんにお会いするにつけ、たかが尿失禁されど尿失禁であると感じます。自分だけじゃないのだろうか、恥ずかしい、泌尿器科にかかりたくないというお気持ちをぜひ乗り越えて、泌尿器科を受診していただけたらと切に思います。